2018年 11月 25日
「自分が設計した建物が熊本地震でも壊れない自信がありますか?」 皆、不安なことだろうと思う。特に木造のベテランほど不安な筈。 何故なら、木造の耐震基準は1950年から義務化され、1971年(昭和46年)・1981年(昭和56年)・2000年(平成12年)と、 地震があるたびに構造基準の見直しがされてきたからだ それまで正しいとされてきたことが、宮城沖地震で否定され、修正し安全だと思った建物が阪神淡路大震災で被害を受け、また修正され、 東日本大震災、熊本地震と続き被害が発生し、その度に専門家が出てきて「想定外の地震でした」という。 本当に想定外だったのか? 2X4は1940年代のアメリカで産官学一体となって「木造住宅の地震耐力」を科学し確立された。 日本では1971年(昭和46年)当時国交省の戸谷英世氏らが日本人誰もが強い木造住宅に住めるように、 アメリカの技術を研究していた工法を一般に使えるようオープン化したのが始まり。 以来この工法の基本的な構造規定(告示1540号)は変わっていない。 何故なら、この約半世紀の間に起きた大きな地震のなか、被災地に建つ 2X4住宅の97%の家が実質的な被害無くその後もその住宅で生活を続けられているという事実が証明しているからだ。 (4分後くらい) この結果は 2X4住宅が優位で 在来住宅が不利だ という話ではない。 自重が軽く加工しやすい木造建築の耐震性は面構造(モノコック構造)で捕らえる方が有利ということの証明である。 そして、その方法も1950年(昭和46年)から確立していたということが重要なのだ。 あまり知られていないが、阪神震災以降、特に姉歯構造事件以降、一般木造住宅の構造チェックの最後の砦『壁量計算書』でさえ確認申請時返却されるようになった。 理由はどうも、見れば責任取らされるからというのだが、公的機関のお墨付きが霧散することは、消費者の気持ちとは逆行する。 元から木造の二階建て(小規模建築)は4号特例により法律上構造責任を設計者個人に任せているので、それが厳密化されただけなのであるが、 木造の3階建てか面積が150坪以上あるか、性能評価など特別な依頼がなければ構造に関して公的な審査義務はない。 その上期待を裏切るようだが、大学で学んだ設計者だ、一級建築士であろうが木造建築の勉強はしていない。(機会が少ない・教える人も少ない) 昔の人は大黒柱をなぜ太くしたのか?なぜ耐力壁は700mm以上が有効とされるのか?なぜ台風性能の面積を地盤から1.35m以上で算出するのか?耐震基準を満たす根拠は何か?台風性能の根拠は何か?自分で調べなければ知りえないまま、設計してる人が多い。 実際の現場では構造はプレカット屋さんにまかせっきりで、大工さんもタッチしないまま建て方始まって棟が上がることも少なくない。 極端だが、不動産屋さんの営業マンが書いた間取りのまま、家が建ってしまう時代なのだ。 昭和46年の工法オープン化当時、2X4工法は輸入工法として扱われ、国内産業保護の観点から木材の仕様規定と共に、 施工規定も細かく明文化された。 使用する木材も、節の数や年輪などをチェックし、木材自体の樹種強度をJIS認定材料しか使えず、20年後の木材の沈みやそりまで考慮した仕様規定をつくり、 釘一本の打ち込み間隔・方向による強度軽減率まで規定し、法律として遵守を義務付けられている。 当時はオーバースペックではないか?とか、厳しすぎる!といわれた2X4構造規定が逆に品質を担保し、施工精度を厳格にし、耐震性能の余力を持って、 その後の多くの震災に耐え抜いたと言える。 読んでくれた方にわかってもらいたいのは、 基準法を守っていれば安全という保証したものではなく 「せめて、これくらいは守ってくださいね。」というのが最低限のルールだということです。 近年、メーカーを含め木造住宅が、2X4工法化していることは強く感じる。 戸谷さんも仰るとおり「この告示は強い木造住宅をつくるために研究していたもの」なのだから、 我々設計者は2X4工法のモノコック構造の考え方を今一度見つめ直し、 現状の一般在来軸組み工法の弱点を比較研究し安全な木構造の構築を図るべきだと思う。 地盤の問題や建築地の用件など絶対のない世界であるが、木造建築物の設計者として大きな自信をもって、 地震による木造住宅倒壊の危険性をゼロに近づける設計ができると信じる。 最初の質問にもどると、僕の答えは 「イエス」です。
by kent_yano
| 2018-11-25 10:43
| 住宅建築家「Y」のノート
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