2007年 06月 28日
今回現場が始まったTa邸の施工写真集にもでて来た、住宅デザインの一つ《クラフツマンスタイル》の話をしておきます。 ご存知の通りクラフツマンは職人です。職人様式?なんとなく想像できる気がします。 では、ちょっと詳しく、、、。 クラフツマンスタイルは本来、イギリスのウィリアム・モリスが19世紀の産業革命時に提唱した「アーツアンドクラフツ運動」に端を発します。 モリスのアーツアンドクラフツ運動は産業革命による大量生産・合理化主義によって低下する職人の権利の復権と尊重、芸術と手工芸の合体を目指し自然との共生を図るという優れた運動でした。 アメリカには1901年カリフォルニアの建築家ギュスターブ・スティックレイが雑誌《クラフツマン》のなかで紹介し、そのデザインだけが人気となった建築様式で、アメリカでアーツアンドクラフツ運動自体がムーブメントになったわけではないらしいです。 その時 紹介され人気となった住宅デザインは当時イギリスでもその思想と共に最も人気の高いデザインで、当時イギリスの殖民地であった インド・ベンガル地方の住宅デザインをモチーフにアーツアンドクラフツ運動のデザインが合体して出来たデザインでした。 その特徴は 家全体にかぶるゆるい勾配の屋根=いわゆる大屋根の平屋の小屋裏部屋に大きなドーマーをつけた1.5階建で、構造材や石など素材はそのまま意匠として使われ、自然との共生が表現されました。 これはモリスのアーツアンドクラフツ運動に 人間性の回復と、女性差別をなくすフェミニズム運動が含まれ、男女子供の差別なく家族全員が一つの大きな屋根の下で平等に暮らす〉というキリスト教の考える家族像=家族一宇を 具現化する建築デザインとして大変有用なデザインだったのです。 クラフツマンと言われてもピンときませんがベンガル地方の家=ベンガロウ=バンガロウならイメージする人も多いでしょう。日本では、あめりか屋の橋口信助が 大正デモクラシーと共に最先端の生活様式としてベンガロウ=バンガロウを 大都市や軽井沢の別荘などで多く建築し、一大輸入住宅ブームをもたらしました。一昨年視察に行った神戸の桜町界隈がそれです。 今の日本で家族が一つ屋根の下で一緒に暮らすという考えは当然のようですが、僕たちの親父たちの世代でさえ、男尊女卑がある位ですから、当時の日本で家や別荘を取得できたやんごとない人々にとって男女平等の思想に沿った住宅デザインは新しかったのでしょうね。 アメリカでは1900年から1930年にかけて、カリフォルニアで爆発的に建設されました。中でもグリーン兄弟が設計した住宅は特に洗練されていて現存する住宅は今でも人気があります。 それから100年、現在では職人気質・技術共に貴重となってしまいました。 中国製品の大量流入。環境問題。売り上げ主義。ハウスメーカーの合理化住宅。装飾が全く排除されたデザイナー住宅?パワービルダーの???住宅。百花繚乱の今日この頃。 今こそ、自然との共生を見つめて日本の職人魂の復活をかけ日本版クラフツマンスタイルを確立する時!?
by kent_yano
| 2007-06-28 13:45
| 住宅建築家「Y」のノート
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